【22卒】航空宇宙民の脱航空就活記

はじめに

 みなさん初めまして。黄緑ペンギンと申します。本記事は東京大学航空宇宙工学科/専攻 Advent Calendar 2020の19日目の記事となっております。本当はペンギンの流体力学特性について執筆する予定だったのですが、面白い論文が見つからなかったのと勉強時間が取れなかたので就活に関するポエムを書くことにしました。

 最初に申し上げておきますが、本記事は「コロナの影響で航空産業が壊滅した結果就活に苦しんでいる航空の学生」という内容ではありません。「コロナとは無関係に文系就職を志して悩んでいる理系大学院生」という内容です。ただのポエムになってしまいますが、それでもよければ読んでいってください。今後就活する後輩や同期の参考になれば幸いです。

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ハッブル宇宙望遠鏡が見た天の川 [出典]

 

なぜ脱航空するのか

 私は中学生のころから「宇宙に携わる仕事がしたい」と考え続けてここまで走って来ました。事実、大学2年生の頃は「博士かJAXA三菱重工か...」みたいなことを漠然と考えていたと思います。ではなぜ昔からの夢を捨てて今就活しているのでしょうか。いくつか理由を挙げたいと思います。

そもそも大学に残れない・残りたくない

 小さい頃は本気で大学教授になりたいと思っていましたが、現実はそう簡単ではありません。学部の卒論では、実験しても全然うまくいかない、考察しようにもそもそも何が起こっているのか見当もつかないなど、座学と研究の違いを垣間見ました。また、この前の研究室輪講では助教に「センスないね」と直球で言われるなど、所詮自分はペーパーテストでそこそこの点を取れるだけの人間であって、研究には少しも向いていないんだなと実感しました。

 また、この道を選べば、来年のポストもわからないまま安月給で働き続ける人生を送るかもしれません。私の知っている博士の方々はとんでもなく優秀な方ばかりです。(正直就活で出会う自信満々の外コン外銀志望の学生より遥かに頭いいです。)そんな方々と将来ポスト争いしたところで勝てる未来が全く見えません。私にとって「やりがい」とは安定した生活があればこそ追求できるものなのです。

エンジニアに向いてない

 これは致命的な問題で、私は工学部なのに"モノ"に全く興味がない人間でした。もう少し具体的に説明すると、例えば「ロケットがどのような原理で飛行しているか」「ロケットエンジンの作動原理は何か」といったことを学ぶのは面白く感じる一方で、「○○トンの推力を出すためにはプロペラ径やシャフト径をいくつにすべきか」や「破壊が起こらないためにはこの部材の厚みはいくつにすべきか」といったことを考えるのは苦痛の極みでした。

 実際、私は街中を走っている車の名前はおろか、いまだに飛行機やロケットの名前もロクに言えません。さすがに論文で頻繁にみるものは覚えましたが、”ロケットの名前クイズ”みたいなのがあれば宇宙好きの高校生に負けちゃいますね。

 一方周りはと言うと、私とは対極の"モノ"に対する興味も知識も豊富な人達ばかりでした。(飛行機に"顔がたれ目"という表現を使う人々を後にも先にも見たことがありません。)重工に行って飛行機や車を作るのは彼らの方が絶対に適任です。そういうことは得意な人に任せて、自分は他のところで活躍しようと考えたわけです。

宇宙を仕事にする必要はない

 色々と書きましたが、私はやっぱり宇宙が好きです。はやぶさ2の帰還には感涙しましたし、SpaceXの一段垂直着陸はいつみても心躍ります。静かな夜にきれいな星空を眺めるのはいつだって素晴らしいことだし、その遥かなる空へ挑み続ける人は皆かっこいいと心から思っています。

 しかし、それと働くということはまた別物ではないかとも思うのです。宇宙についてはニュースをみたりGoogle Scholarで最新の論文を漁ることで追いかけることができます。「好きなことを仕事にしたら嫌いになった」とはよく聞く話でもあります。自分が納得して働ける・自分の能力をフルに発揮できる環境というのは宇宙業界の外に沢山あるはずです。そう考えると、航空宇宙にこだわる必要なんて1ミリもないという結論に至りました。

何のために・どういう方向で就活するのか

 そもそも就活とは何を目的にするのでしょうか?「内定を得る」のはもちろんですが、ではその企業を選ぶ理由はなんでしょうか?

 就活を始めた頃にリ〇ルートの社員さんがこの話をしてくださったのですが、その一つの答えは「幸せな人生を実現するため」というものでした。なんとも抽象的な話ですし、"浅い"という感想を持たれる方もいるかもしれませんが、間違ってはいないはずです。では「幸せ」とは何か。それが個々人の価値観によって異なり、どんな企業に行きたいかの指標になるというわけです。なお、"就活の軸"についてはモチベーショングラフからの自己分析なども活用しながら決めるのが一般的で、私もそれに倣いました。

 なんだかんだで私はまず社会をもっと知るべきだという結論に達し、まずは色んな業界の説明会・インターンに参加することにしました。そこで気に入る企業があれば就職するもよし、もし就職というものが想像以上に自分に向いていない場合は大学に残ればいいやくらいの気持ちで気楽に選考を受けていました。

これまでの就活状況

 就活にむけて動き出したのは2020年の3月、M1の春でした。とはいってもこの時期は企業イベントはほとんどないので、選抜コミュニティーという就活エージェント(?)の選考をいくつか受けていました。選抜コミュニティーは現在3つ所属しているのですが、「入った意味ないな」程度のものもあった上に、とある企業の採用担当の人事の方が「選抜コミュニティーに入っているかとかは全く見ていない」と仰っていたので無理に受ける必要はないと感じました。また、就活仲間のグループを友達同士でいくつか作ってGDの練習や勉強会、ケース面接の練習をしました。

 夏は日経を中心に色々な企業の説明会にいったり、インターンに応募したりしました。この時期は自分の中で働くことのイメージを全く形成できておらず、志望している業界もなかったので、ちょっとでも面白そうだと思ったらとりあえず説明会を聞きに行くようにしていました。ですが今振り返ると無意識に切っていた企業がいくつもあったように感じるので、もっと広く見るべきだったかなと思います。

 インターンは5社参加しました。選考の通過率は56%、思ったより落ちるなとヘコんでいましたが、今考えるといいほうだったと思います。業界としてはコンサル・金融・インフラを中心に参加しました。一番面白かったのは某新幹線の強い鉄道会社で、インターン参加前は志望度はかなり低かったのですが、「ここで働くの悪くないじゃん」と思うくらいまで志望度が上がりました。逆にコンサル系は肌に合わない企業が多かったので、あまり自分に合ってない業界なのかもしれないと思いました。インターンに参加すると自分の向き不向きが鮮明に見えてくるのでいいですね。

 秋は就活のモチベが低下したこと、研究室の活動が忙しかったことなどが重なり、ほとんど就活はしていませんでした。秋インターンは面白そうだと思ったとある政府系金融機関のみ選考を受け、運よく通過することができました。そのインターンはとても学びの多い有意義なものだった上に、業務もやりがいのある面白いものだと感じたため、その企業は現在の第一志望群になっています。

冬(現在)

 冬も就活モチベは低下気味。とりあえず出したものはマッキ〇ゼーと某日経コンサルのITソリューション部門で、後者のみインターンへの参加権を得ました。あとは某財閥系の総合商社2社に応募する予定で、それ以外は特に考えてはいないです(もう疲れた)。年内の内定獲得は不可能、たぶん来年6月まで就活は続きます。

就活で失ったもの

 ネガティブなサブタイトルですが、就活を通して色々メンタルが擦り減っているので、愚痴も兼ねて何を失ったか記していこうと思います。

時間

 就活は何より時間をとられます。長期休み期間ならまだいいですが、最近は選考や面談のために講義を欠席せざるを得ないこともしばしば。奨学金を受給しているので講義には出席したいのですがどうしようもありません。もう今学期の成績を見るのが怖いです。

研究室での信頼

 私の所属する研究室はとにかくミーティングが多く、毎日進捗を生むことを求めらる(たとえば毎朝今日何やるかを説明するミーティングがある)環境です。そんななか私だけ頻繁にスーツを着て「今日は○○社の人事と面談します」と宣言しなければならない辛さ。最近はボスの目線も態度も冷ややかになっているような気がしていて、居心地がよろしくないです。ただ、研究室によっては就活禁止のところもあるらしく、それに比べたら全然恵まれているので感謝しなければいけませんね。

人間性

 これは失ったというより、自分の人間としての未熟さが露呈したというほうが正しいと思うのですが、周りと自分を比較して妬んだり卑屈になってしまうということがしばしばあります。例えば誰かが内定をもらった時、仲の良い友達ならば素直に祝福できるのですが、顔見知り程度の人の場合は「あの人が内定貰ってるのに俺は...」という気持ちが最初に来てしまいます。これは自分の不徳の致すところではありますが、メンタルを擦り減らす一因になってしまっています。

最後に

 サンタさん内定ください。